2022年12月4日日曜日

イーロン・マスクのTwitter騒動に学ぶコミュニケーション

イーロン・マスク(以下「イーロン」)のTwitter買収で色々てんやわんやになってますね。Androidアプリに対するツイートの間違いを指摘したエンジニアが解雇された事件は有名です。

この件に対しての世間の反応は解雇されたエンジニア(エリック・フローンホーファー;以下「エリック」)に対する同情というかイーロンに対する批判が多いような印象を受けます。「誤りを指摘されたイーロンがて逆ギレしてエリックを解雇した」と解釈している人も多いように見えます(個人の感想です)。

ただ、この件はエンジニアが非エンジニア(※)とコミュニケーションを取る時に大事なことが詰まっているように感じるので、どちらが正しいのかといった議論とは別の部分で取り上げてみます。エンジニアに限ったことではないのですが、エンジニアや開発者は特にやりがちな話です。

今回の解雇に正当性があるのかという話は法律の専門家ではないので触れません。

※イーロンもエンジニアだけどね!

時系列の雑なまとめ

まずはとっても雑に時系列をまとめてみます。詳しい話はGIGAZINEに載っています。

  1. イーロン「Twitterアプリがクッソ遅くてすまんな。RPCのバッチが1000個以上走っとるんだ」
  2. エリック「ワイ6年以上Androidアプリの開発しとるんだけど、イーロンのツイートは間違っとるで」
  3. イーロン「じゃあ教えてくれ。正しい数字は何なん?」

そっからなんやかんやあって、最終的にエリックが解雇されました。

どちらが正しいのか?

最初に「どちらが正しいのかといった議論とは別の部分で取り上げる」と言いましたが、一応ここは技術系ブログを標榜しているので技術的なところにも軽く触れておきます。

GIGAZINEによると、エリックは以下のようなイーロンの誤りを指摘しています。

  • 実行しているのはRPCではなく、バックグラウンドリクエスト
  • 実行しているバッチの数は1200ではなく200

まあ詳しいところは知らんのですが、おそらく技術的には6年も開発に関わっているエリックが正しいのでしょう。イーロンもエンジニアではありますが、さすがに超多忙なイーロン本人がTwitterのソースコードを読む時間があるわけもなく、テスラのエンジニアがTwitterのソースコードを検証しているという記事もあるので「親分、RPCのバッチが1000個も走ってますぜ!」というテスラのエンジニアの報告を受けてツイートをしたものでしょう。ただの推測ですが

そしてエリックは、イーロンの技術的に正確でないツイートに対して、開発に携わっているエンジニアとして我慢できなかったのでしょう。そして「公開の場じゃなくて社内で聞けや」とも言っています。これもごもっとものように見えますが・・・

技術的な議論はイーロンにとっては重要ではない

でも、この一連のやりとりを見て、どうも両者(イーロンとエリック)の論点が食い違ってると感じました。どういうことかというと、

「エリックは技術的な誤りを指摘しているが、それはイーロンにとっては重要ではない」

ということです。

「は?自分からRPCとか1000以上とかいう情報を出しといて何いっとんだ?」と思った方もいると思いますが、おそらくイーロンが一番言いたいことは最初のツイートの最初の一文でしょう。

Btw, I’d like to apologize for Twitter being super slow in many countries.

つまり、「Twitterが遅いこと」を(めっちゃ丁寧に)謝罪しているのであって、遅い原因は二の次なのです。

RPCとバックグラウンドリクエストの違いとか、バッチの数が1200か200かという技術的な話はどうでもいいのです。RPCとか1000以上というのはテスラのエンジニアからの報告があったのでしょうが、イーロンにとってはそこは本質ではないので深く検証せずにツイートしたのでしょう。

やり取りの中でイーロンが「TwitterのAndroidアプリがクッソ遅いんだけど、おまえは今まで何やっとったん?」という、一見すると話題そらしのようなツイートもしていますが、イーロンにとっての論点は最初からTwitterが遅いことで一貫しているので、これは話題そらしでもなんでもないのです。

このように捉えると、エリックの言う「公開の場じゃなくて社内で聞けや」という指摘もイーロンにとっては的外れに見えることがわかるのではないでしょうか。イーロンは「Twitterが遅いことを謝罪している」のであって、「遅い原因を突き止めたい」わけではないのです。そして謝罪は公開の場でしなければ意味がなく、その後のやり取りは公開の場で指摘されたので流れでそのまま続けただけでしょう。知らんけど。

教訓

この一連の騒動から学ぶべきことは、「相手が重視している部分を見極めること」です。エンジニアは特に数字や技術用語に敏感になりがちで、そこに誤りがあるとつい突っ込みたくなってしまうのですが、突っ込む前に「果たしてそこは議論の本質か?要するに相手は何を言いたいのか?」を考えるクセをつけましょう。

要するに国語力・読解力が大事だよということです。

「誤解されるような言い方をしてるイーロンも悪いだろ」とか「今回は訂正されたものの、技術的なことを確認せずに誤った情報を公表したイーロンも悪いだろ」という意見はそのとおりなのですが、偉い人ってだいたいそんなもんだし(個人の感想です)結局は偉い人に合わせるしかないので諦めてください


ところで、世界一の富豪であるイーロンにとって買収価格の440億ドルというのはどれくらいの感覚なんでしょうか。Twitterがこれからどうなるのかはわかりませんが、せっかく買収したTwitterが仮になくなってしまっても、痛いのは痛いけど致命的ではない、我々で言えば100万円失ったくらいの感覚なのかもしれません。

いや、イーロンが440億ドル失っても人生10000回以上余裕で遊んで暮らせることを考えたら、全然痛くないかも・・・

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