就活シーズンになるとちょいちょい話題になりますよね。圧迫面接。今でも一部の業界・業種では行われているところもあると聞きます。
今回は、採用側の経験(採用業務に携わっている経験)および被採用者側の経験(複数の会社を渡り歩いた経験)から、圧迫面接の功罪と、圧迫面接をする場合(会社側)の心構え、される側(応募者)の心構えを紹介します。
ちなみに自分は今まで圧迫面接をされた経験はありますが、した経験はありません。
圧迫面接の功罪
そもそも何で圧迫面接するん?という「功」の話ですが、面接官のストレス解消以外によく言われる合理的な理由を挙げるとこんな感じでしょうか。
- ストレス耐性を見るため
- 一番の理由はこれです。特に営業職などでは顧客に無茶を言われたり怒鳴られたりする場合もあるので、圧迫面接を行うことで「理不尽な顧客に耐えられるか」をある程度測れます。
- 想定外の状況への対応力を見るため
- 「志望動機」「自分の強み」などは面接の定番なので、大抵の応募者は答えを用意していると思いますが、そこに想定外の状況を作ることで、とっさの対応力や気転を見る目的もあります。
では「罪」の部分はというと・・・まあ今さら言うまでもないと思います。
- 悪評が広がる
- これに尽きます。「合格通知を出しても気を悪くした応募者に断られてしまう可能性がある」など他にも色々ありますが、悪評が広がって会社の価値を下げることに比べたら微々たるものです。
- それなりの値段がするICレコーダーが必要だった一昔前とは違って、今は録音も拡散もスマホ1台で簡単にできる時代です。
面接官へのアドバイス
最初に断っておきますが、この記事では圧迫面接を推奨しているわけではありません。圧迫面接に功も罪もあることは事実ですが、もはや罪が強すぎるので避けられるなら避けるべきです。上で書いたとおり、現在はスマホ1台で簡単に録音も拡散もできてしまいます。
つまり、面接官への第一のアドバイスは「圧迫面接をするな」です。
「一般人」を甘く見てはいけない
特にITリテラシーの低い方の中には、今の時代の情報の広がり方を甘く見ている方がいます。もはや「なんの影響力もない一般人の戯言など放っておけ」では済まない時代です。
SNSや動画投稿サイトのような悪評拡散ツールも充実しているので、「なんの影響力もない一般人」が拡散した悪評(自業自得)により大企業が謝罪に追い込まれたり株価に影響したりといった出来事は今では珍しくもありません。
圧迫面接を行わざるを得ない場合
圧迫面接はできるだけ行わないほうがいいのですが、もしかしたら中には業務命令などでどうしても行わなければいけない場合もあるかもしれません。
そのような場合も人格否定的な言動は避けるなど、最低限の礼儀はわきまえましょう。また、正当な理由なく家族構成や出身地などを尋ねることは(違法ではないものの)厚生労働省のガイドラインで禁止されています。度を超えた態度や言動は、侮辱罪や名誉毀損罪に問われる可能性があります。
そして、最後に「今回は◯◯の理由により強い言葉で面接を行いました。お気を悪くされたかと思います。申し訳ありませんでした」のように誠意を込めて謝罪しましょう。
ただし謝罪も万全ではなく、圧迫面接の途中で応募者がキレて謝罪の暇もなく退出してしまったり、あるいは会話を録音されていて謝罪部分だけ削って拡散される場合もあります。やはり圧迫面接はできるだけ行わないほうがいいでしょう。
応募者に挑発されることもある
SNSが発達した現代ならではといいますか、バズりなどの承認欲求を満たす杢的で応募者から逆に挑発的な受け答えをされる可能性もあります。自分が最初に行った挑発的な言葉を削り、後に続く面接官の興奮した声と自分の冷静な声だけを抜き出して拡散するようなケースです。
そのため、圧迫面接を行わないことはもちろんですが、面接官自身にもストレス耐性が必要な時代かもしれません。
応募者へのアドバイス
つづいて応募者へ。
面接官も、好き好んで圧迫面接をしているわけではない
上で書いたように、圧迫面接をするには(面接官のストレス解消だけでなく)それなりの理由があります。だからといって圧迫面接が許されるかというとそれは別の問題ですが、とにかく仕事で仕方なくやっているだけで本心ではないと考えれば多少は気が楽になるでしょう。
それは本当に圧迫面接?
圧迫面接という言葉に過敏になりすぎて、ちょっと突っ込まれただけで「これは圧迫面接だ!」と判断してしまう人もいます。面接官の立場としても、職務経歴や成果の曖昧な部分に対して圧迫する意図は全くなく「これってどういうことですか?」と突っ込むことはよくあります。その答えが曖昧ならさらに突っ込むこともあります。
それは圧迫面接ではなく、逆にきちんと答えられたら高印象というチャンスだと思ってください。面接官が興味のない経歴や募集職種と関係ない成果に突っ込むことはあまりありません。「この経歴や成果ならうちで活躍してくれるかも!詳しく聞いたろ!」のと判断したからこそ突っ込まれているのです。嘘の経歴や自分以外のメンバーの成果を書いていた場合はここでバレますけどね。
採用する側の経験がないとなかなか難しいですが、自分が作った履歴書と経歴書を採用側の立場で見てみましょう。上で書いたような曖昧なところが見つかるかもしれませんし、自己PRに対して「それが会社にどう役に立つの?」という疑問が出てくるかもしれません。あるいは、頭の中では明確だったつもりでもうまく文字に落とせていないものがあるかもしれません。そもそもの話、「履歴書を読む人はあなたのことを何も知らない」という前提を忘れてしまっているかもしれません。
わざと曖昧な部分を残しておいて誘導させるこすいテクニックもあるんですけどね。学会発表とかでも使われたりします。
面接の内容を録音しておこう
面接室に入る前に、スマホの録音アプリを起動しておきましょう。オンライン面接なら別途録音ソフトを使うとか、あるいはマイクとスピーカーの近くに録音アプリを起動したスマホを置くなどやりようはあります。
録音の目的は圧迫面接の内容をSNSに晒すため・・・ではなく、
- 面接のやりとりを後で振り返って今後に活かすため
- 万一圧迫面接だった場合に「録音してるからいつでも晒せるんだぞ」という心理状態にすることで落ち着きを保つため
- どうしても我慢できず晒したくなったときに「挑発してくる面接官に対して興奮して怒鳴り返す自分」だと晒すのが恥ずかしいので、晒しても恥ずかしくない「挑発してくる面接官に対して落ち着いている自分」という構図を意識するため
主目的は圧迫面接対策ではなく、受け答えを振り返って今後に活かすことが主目的です。しかし、気持ちを落ち着ける圧迫面接対策としても有効です。晒すのは最後の手段にしましょう。
逆質問とスルーを活用しよう
圧迫面接では「つまらないね」や「うちに向いてないんじゃない?」といった返しづらいことを言われる場合もあります。
そういう場合は「失礼ですが、どういった点がつまらないと感じたのか具体的に教えていただけないでしょうか」「なぜ向いていないと判断されたのか教えていただけないでしょうか」と逆に質問しましょう。ただし喧嘩腰ではなく、自分に欠けているところを教えてほしいという態度が大事です。きちんとした理由が返ってくる場合もあるからです。理由に対して反論できる場合は丁寧に答え、反論できる材料がなければ「なるほど、ご指摘ありがとうございます。今後とも精進させていただきます」と素直に引き下がりましょう。
中には、「自分で考えたら?」のようにまともに答えてくれない場合もあります。おそらくその面接官は最後までこの調子で、あなたが何を言っても困らせてくるのでまともに取り合う必要はありません。「面接官がつまらないと感じたのならそれは面接官の自由で、自分にはどうもできない」という開き直りのメンタルに切り替えて、「そうですね、では後で(面接後に)考えておきます」のようなスルーを活用しましょう。
経歴に対して文句をつけてくるなど、逆質問もできず「どうすりゃええねん」という状態になったときは「そうですかー」と受け流しましょう。くれぐれも、ベソをかいたり怒鳴ったりしないように。録音しているということを思い出して冷静になりましょう。
我慢できなくなったときは
時には差別的なことを言われたり身内をバカにされるなど、許容できないことを言われて我慢できなくなり、どうしても一矢報いたいときもあるかもしれません。そのときはその企業への入社を諦めるつもりで晒しをほのめかすという手段も一応あります。
ただし、晒す場合もきちんと筋を通しましょう。相手の許可を得て晒すのが粋ってもんです。面接の最後には大抵「何か質問はありますか?(圧迫面接だと「何か言いたいことある?」)」と聞かれるので、以下のような質問をぶつけてみましょう。
「御社のリスク管理について質問させてください。正直申し上げまして、今回の面接は非常に不愉快でした。他の方へも同じような面接を行っているとするなら、中には面接内容を録音してSNSにアップロードする方がいるかもしれません。御社ほどの企業であればそういった事態も想定されているという認識で間違いないでしょうか?」
ここでのポイントは4つ。
- 「自分が晒すぞ」とは言わずに「晒す人が出てくるかもしれないよ」
- 「晒されたらどうするの?」とは言わずに「御社なら晒されることも当然想定しているってことだよね?」
- 「今録音している」とは言わない
- 「仕方なく圧迫面接をやってるってわかってるんだぞ」的なことは言わず、面接内容に対する不快感だけを表明する
圧迫面接の姿勢を崩さない面接官であれば、あなたは録音していないと判断して「当然想定してるけど?」という趣旨の強気の返答をするでしょう。そこで「では仮にアップロードされても問題ないということですね?」と畳み掛けましょう。
「ああ問題ないね」という答えが返ってきたらおめでとうございます。無事言質を取れました。中には気になって「なに、録音してるの?」と聞いてくる人もいるかもしれませんが、その場合は「はい」とも「いいえ」とも言わずに「仮の話です」とだけ答えましょう。勝手に「いいえ」と解釈して「問題ないね」と答えてくれるでしょう。
誘導尋問に近いような感じがしますが、まあ性格の悪いことをやっているのはお互い様です。しばらく手品業界にいたこともあり、こういった誘導だけは無駄に得意になってしまいました。
念のため言っておきますが、上で「晒すのは最後の手段にしましょう」と書いたとおり、晒し行為を推奨はしません。どうしても我慢できなくなったときに何も言わずに晒すよりはマシというだけなので、この手順で晒して不利益を被ったとしても責任は持てないのでご注意ください。
世の面接官たち、こういうことをやってくる応募者もいるかもしれないから圧迫面接するなよ!絶対するなよ!!
番外編: 圧迫面接をした結果・・・
これは、実際に圧迫面接を受けた方から直接聞いた話です。Qさんとしましょう。
Qさんは、就職活動で某大企業を第一志望で受けました。日本中の誰もが知っていて世界的な知名度もある大企業です。Wikipediaでは数十の言語版があるといえば世界的な知名度もおわかりいただけるでしょう。
Qさんは書類選考を難なく通過して何度か面接を行ったのですが、現場担当者(入社したら上司にあたるであろう人)の面接でかなりの圧迫面接を受けました。Qさんは新卒で、圧迫面接どころか面接自体にもあまり慣れていなかったということもあり、かなりショックを受けていました。
しかしQさんは能力面では極めて優秀なため、後日みごと合格通知を受け取りました。しかし一方で他の企業も受けており、そちらにも無事合格しました。さてどちらにしようか、圧迫してきたところは第一志望だけど入社後やっていけるのかなと悩んでいると「上司が圧迫面接するようなところに入ったらアカン!」と家族からも大反対され、圧迫面接をしてきた第一志望の企業にはお断りの連絡をいれました。
すると、なんとその企業から「なんとか考え直していただけませんか?」と必死に懇願されたそうです。大企業ならば普通去る者は追わないので、引き留めの連絡が来るのはQさんが優秀であるという証拠に他なりません。最終的にQさんはやはりこの企業を断り、もう1つの企業へ行くことに決めました。
さて、この話を聞いてどう思いますか?あ、「もったいつけた言い回ししてるけど、圧迫面接をしたばかりに優秀な人をのがしただけのよくある話やんけ」以外で。
一応言いますがこれは自分の体験談ではありません。ワイがこんなに優秀なわけない。
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